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2017年03月07日放送

【ラジオきのこらむ】part.23 きのこ博士が語るきのこ愛と、ちょっぴりディープなきのこの世界

前回に続きまして、スペシャルゲストの東京農業大学・江口 文陽(えぐち ふみお)教授にお話をおうかがいしています。

(前編)きのこ博士に聞くおいしいきのこの見分け方と、国産キクラゲ生産の取り組み

江口文陽さんプロフィール

東京農業大学 教授。
「食と農」の博物館 館長。
独立行政法人日本学術振興会 学術システム研究センターの専門研究員。
専門領域は森林保全、木材の有効活用、きのこの利用法の開発というきのこの博士。
浅野産業㈱の総合研究所では、約10年前から研究所の顧問として現在も活躍中。

キノコでつながる、命のリレーとは?

―江口先生は、全日空の機内誌であります『翼の王国』に、『博士の愛したきのこの旅』という連載を執筆されていますよね。

江口教授: そうですね。不定期連載で書かせていただいてますね。

(※翼の王国は、雑誌を購読するか、全日空の飛行機搭乗時に読むことができます)

―今手元に雑誌があるのですが、本当に全国各地きのこを追い求めて旅をされていらっしゃるのですね。日本中、どこにでもきのこはあるものなのですか?

江口教授: そうですね。日本全国、非常にあたたかい温帯の気候地帯ですから、日本の土壌からはいろんなきのこが生えてくると言えますね。

―その中で、この番組でもお話いただいた鹿児島県の沖永良部島(おきのえらぶじま)のキクラゲについて、江口教授が取材に同行されたと聞きました。

所長(浅野産業㈱きのこ研究所所長、以下「所長」): そうなんです。このコラムでは第6回第8回でご紹介いたしましたね。
キクラゲはそもそも温かい南の方に生息するきのこでして、取材時には江口先生にご案内いただきました。
私では語れない部分がたくさんありますので、今回はぜひそのあたりのお話を江口教授におうかがいできればと思います。

鹿児島県の離島、沖永良部島での取材の様子。 鹿児島県の離島、沖永良部島での取材の様子。

―というわけですが江口先生、沖永良部島のきのこの特徴といいますと、どういったところになるのでしょうか?

江口教授: 周りを海に囲まれた「島」という場所では、木材を運んでくるということに関しては、非常にお金がかかってしまいます。
ですが、沖永良部島ではサトウキビをたくさん生産していまして、それを搾ったあとの搾りカス「バカス」が大量にありました。
バカスはそのままではゴミになってしまいますが、キノコは食物の繊維を食べて成長するわけですから、バカスを培地にして、そこにキクラゲの菌糸を繁殖させます。
そうすれば、本来は廃棄物になるはずだったバカスはキクラゲの力によって分解され、今度はそれを土壌の改良剤「肥料」にして使うことができるようになるわけです。まさに農業循環ですね。
そして、その過程でできたキクラゲは、島の食品として食べていく。これが沖永良部島の特徴的なキクラゲ生産方法として確立されたわけですね。

サトウキビの搾りかす「バカス」。 サトウキビの搾りかす「バカス」。
バカスの菌床から育つキクラゲ。 バカスの菌床から育つキクラゲ。

―その土地その土地で、風土に合ったキノコ作りが根付いてきたのですね。ところで先生はこれまでにどのぐらいの種類のきのこを食べられているのでしょうか?

江口教授: おそらく約200種類ぐらいは食べているのかな思いますね。

―その中で特に印象に残っているキノコはありますか?

江口教授: 例えば「シロアリシメジ」ですね。
石垣島なんかにも生えているのですが、タイワンシロアリの巣の中からにょきっと生えている特徴的なキノコで、しかも美味しいですね。

―全然想像がつかないです(笑)。シロアリとキノコがつながってくるんですね。

所長: 先生とこれまで色々お話してきまして、やはりキノコという生き物は環境と密接なかかわりがあると感じました。
しかも単独で生きるというよりも、何かの生き物と協力しながら、共生して生きている。
自分が作りだした栄養体や排泄物を、また次の生き物が使う。
その生き物の代謝産物をまた次の生き物が使う。
キノコはそんな自然全体の仕組みの中で生き抜いてきた生き物であるがゆえに、人工栽培が難しいなと、事業化が難しいなと感じている次第です。
ですから先生が先ほどおっしゃったシロアリシメジがもしも人工栽培できたらですね、企業としても成長するでしょうし、何よりも健康が気になっている方々のニーズにあったものを提供できるのではないかという気がしますね。

―本当にキノコはいのちを繋いでいくというか、私たちもそれをもらって生かされているというのを改めて感じたのですが、キノコのどういったところに奥深さや魅力を感じていますか?

江口教授: 先ほどキノコが命を繋いでいくという話がありましたが、キノコというのは、私たちの食料として活用されると同時に、有機物である木の葉っぱ等を分解して、土にかえすという性質を持っています。
ゴミを分解し、環境を浄化してくれる優れものということから、きのこに対して「すごさ」を感じ、愛情を注いでいますね。

―愛情を注いでいる、そこがやはり生き物というところにつながってくるのかなと思いますね。本当にキノコを愛しているからこそ、富士山に登られたり、沖永良部島まで行ったりと北から南まで全国で精力的に活動されていますが、今後の展望などはありますか?

江口教授: キノコって、歩く道に終わりはないと私は考えています。
世界では図鑑にのっていないような新しいキノコが、今もまだ発見されているんですね。
したがって世界各地の色んなところを歩くことによって、キノコと自然がどのように共生関係を持っているのか、その奥深さをもっともっと探求していきたいと考えています。

所長: 我々日本人は、もともと縄文時代からキノコを食べていました。
今は都会になりまして、キノコを街中で見ることはあまりないのですが、実は太古の昔からキノコと我々は一緒に暮らしてきたわけです。
現代ではキノコとの関わりが少なくなってしまったかもしれませんが、今後は「食」という形でキノコを家庭に取り入れてもらいたいなと思います。

―スーパーに行って手に取ったら、いつものキノコなんですけれども、また少し違った思いで、ロマンを感じながら食べていただけたら嬉しいですよね。

江口教授: そうですね。昔はキノコといったら、山に行って採取したり、偶然性でとっていたわけです。
しかし現代では、実業として良質なキノコを鮮度の高い状態でお届けしていて、それがスーパーに一歩足を踏み入れればたくさんあるわけじゃないですか。
キノコには食物繊維であったりですとか、あるいはキノコでなければ作れない成分もたくさんもっていますので、1日50g程度を目安にキノコを食べていただいて、キノコで健康作りをしていただきたいというのが、私からのお願いでもありますね。

―まさに食と健康という、この番組のテーマでもあるのかなと思います。江口先生、ありがとうございました。

次回のお知らせ

次回2017年3月21日(火)の放送は一年間の総まとめ、次回の放送が最後となります。
最終回では生キノコのプレゼントを用意する予定ですので、ぜひお聴きください。